骨粗鬆症は、特に中高年以降の多くの人々が直面する健康リスクの一つです。
この疾患は、骨がもろくなり、骨折しやすくなるという深刻な問題を引き起こします。
しかし、適切な食事や生活習慣を取り入れることで、骨粗鬆症のリスクを大幅に減少させることが可能です。
特に重要なのが、骨の健康をサポートする栄養素を含む食べ物を摂ることです。
一方で、骨に悪影響を与える可能性がある食事習慣は避けなければなりません。
この記事では、骨粗鬆症を予防するために「積極的に摂るべき食べ物」と「避けるべき食事習慣」について具体的に説明します。あなたの食生活が骨を強くするものになっているか、見直してみましょう。

この記事の監修者:松繁 治 先生(整形外科医)
経歴:
岡山大学医学部卒業。現在、新東京病院に勤務し、整形外科および脊椎外科を専門としています。著書に「ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績」があります。
続きを読む
資格:
・日本整形外科学会専門医
・日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
・日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
骨粗鬆症を防ぐために積極的に摂りたい食べ物
骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムやビタミンDなどの骨にとって重要な栄養素を意識的に摂取することが重要です。これらの栄養素が不足すると、骨の密度が低下し、骨折のリスクが高まります。
まずは、骨を強く保つために積極的に摂るべき食材について見ていきましょう。
カルシウムが豊富な食材
骨の主成分であるカルシウムは、骨粗鬆症予防に欠かせない栄養素です。カルシウムは骨に貯蔵され、骨を硬くする役割を果たします。
しかし、現代の食生活ではカルシウムが不足しがちです。
以下の食品を意識して摂取することで、カルシウムの補給が期待できます。
- 乳製品:
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、カルシウムを豊富に含む代表的な食品です。特に牛乳は、吸収率も良く、手軽にカルシウムを摂取できるため、毎日の食事に取り入れやすい食材です。ヨーグルトはカルシウムだけでなく、腸内環境を整えるプロバイオティクスも含まれていますので、より健康的です。 - 小魚:
ししゃも、いわし、アジなどの小魚もカルシウムが豊富です。魚の骨ごと食べることで、効率よくカルシウムを摂ることができます。魚にはさらに、オメガ3脂肪酸が含まれており、心臓や脳の健康にも寄与します。 - 大豆製品:
豆腐や納豆などの大豆製品にもカルシウムが多く含まれています。特に豆腐は、吸収しやすい形でカルシウムが含まれており、ベジタリアンの方にもおすすめです。
ビタミンDを含む食材
カルシウムを効率よく吸収するためには、ビタミンDが欠かせません。ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収を助ける役割を持っており、日光を浴びることで体内でも生成されますが、食事からも補うことができます。
- 魚類:
特にサケ、サバ、イワシといった脂の乗った魚はビタミンDが豊富です。日本では「魚中心の食生活」が古くから推奨されていますが、現代の食事では肉中心の食事が多くなりがちです。意識的に魚を取り入れるようにしましょう。 - 卵黄:
卵の黄身にもビタミンDが含まれています。卵は手軽に摂取できる食材であり、ビタミンDを補うためにも有効です。注意すべきは、卵の摂取は適度に行うことで、コレステロール値にも配慮が必要です。すでにコレステロール値が高い方は、ビタミンDのとりすぎには注意しましょう。 - キノコ類:
特に干しシイタケはビタミンDの供給源として優れています。キノコ類は、カロリーが低く、食物繊維も豊富なので、健康的な食事に役立つ食材です。干しシイタケは、乾燥させることでビタミンDの含有量が増えるため、普段の料理に加えると良いでしょう。
マグネシウム、ビタミン、亜鉛を含む食材
骨の健康にとって、カルシウムだけではなく他の栄養素も重要です。特にマグネシウム、ビタミン、亜鉛は、骨の代謝や形成を支える重要な役割を果たしています。
- 緑黄色野菜:
ブロッコリー、ほうれん草などの緑黄色野菜には、マグネシウムやビタミンKが豊富に含まれています。ビタミンKは、カルシウムを骨に固定する役割を果たし、骨密度を保つために不可欠です。これらの野菜を毎日の食事に取り入れることで、骨の健康をサポートできます。 - ナッツ類:
アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類には、マグネシウムや亜鉛が多く含まれています。ナッツは手軽に摂取できるため、間食として取り入れるのも良いでしょう。ただし、カロリーが高いため、摂り過ぎには注意が必要です。
骨粗鬆症を悪化させる避けるべき食事習慣
骨を守るためには、良い食材を摂取するだけでなく、骨に悪影響を与える可能性がある食習慣を避けることも重要です。
以下は、骨粗鬆症を悪化させる恐れのある習慣です。
過剰な塩分摂取
塩分の摂りすぎは、体内のカルシウムの排出を促進し、骨密度を低下させる可能性があります。
特に、加工食品やインスタント食品、スナック菓子には塩分が多く含まれています。日本人は塩分摂取が多い傾向があり、高血圧などのリスクも増加するため、減塩を意識した食生活を送ることが大切です。
過剰なカフェイン摂取
コーヒーやエナジードリンク、炭酸飲料などに含まれるカフェインは、利尿作用があり、カルシウムの排出を促す可能性があります。カフェインの摂り過ぎは、特に骨密度に影響を与えるため、コーヒーを1日に何杯も飲む習慣がある方は注意が必要です。代わりにカフェインの少ない飲み物やデカフェを選ぶことで、リスクを軽減できます。
アルコールの過剰摂取
アルコールは、骨の再生を妨げ、カルシウムの吸収を阻害する働きがあります。さらに、アルコールの過剰摂取は体全体に悪影響を及ぼし、骨折のリスクを高める可能性もあるため、飲酒の頻度や量には注意が必要です。
適量の飲酒を心がけ、健康的な食生活とバランスを取ることが重要です。
骨粗鬆症予防のためのライフスタイルアドバイス
適度な運動と骨密度の維持
骨粗鬆症を予防するには、適度な運動も非常に重要です。
ウォーキングや軽い筋力トレーニングは、骨密度を維持し、骨折のリスクを軽減する効果があります。
特に、負荷をかける運動は、骨に刺激を与えて強くする働きがあります。運動習慣を持たない方は、まずは日常生活に無理なく取り入れられるウォーキングから始めてみましょう。
バランスの取れた食事とサプリメントの活用
食事から必要な栄養素を摂るのが理想ですが、現実的にすべてを食事だけで補うのは難しい場合もあります。
特にカルシウムやビタミンDが不足していると感じる場合は、サプリメントの活用も選択肢の一つです。
ただし、サプリメントは食事と違い吸収されにくいケースもあるため、表示されている数値のカルシウムやビタミンDが実際に吸収されるわけではありません。あくまで補助的なものであり、食事から栄養を摂ることを基本としつつ、必要に応じて利用しましょう。
まとめ
骨粗鬆症を予防するためには、食生活と生活習慣を見直すことが大切です。
カルシウムやビタミンDを中心に、骨を強くする食材を積極的に摂取しつつ、塩分やカフェイン、アルコールを控えることが、骨の健康を守るための重要なステップです。
今日からできる改善で、未来の健康な骨を守りましょう!

監修者:松繁 治 先生からのコメント
骨を形成するためにタンパク質も重要です。肉、魚、大豆製品、卵などをバランスよく取り入れましょう。
また、ビタミンやミネラル、抗酸化物質が豊富な果物は、骨の健康をサポートします。特にオレンジ、キウイなどを意識して摂取しましょう。
食事は骨粗鬆症に限らず、健康でいるための第一歩です。これだけをとっておけばいいという食品はありません。まず今までの食事に1品追加したり、お菓子を果物に変えるなどちょっとしたことから始めてみましょう。