対談コンテンツ

「骨活は歯磨きと同じ」――“整形外科医を不要にしたい”金井先生が語る、骨粗鬆症予防の本質

「骨粗鬆症」という言葉を聞くと、“高齢女性の病気”というイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし実際には、骨の健康は子どもから大人まで、すべての世代に関わる重要なテーマです。

 

今回お話を伺ったのは、「骨折を減らし、整形外科医を不要にしたい」という強いメッセージを掲げ、骨粗鬆症予防の啓発活動に取り組む整形外科医・金井先生。

横浜市立大学医学部卒業後、急性期医療から在宅・慢性期医療まで幅広く経験し、現在は脊髄外科を専門としながら、超高齢社会における骨粗鬆症の課題に向き合っています。

弊社でも、記事監修や啓発コンテンツ、勉強会などを通じてご一緒する中で、「骨の健康をもっと身近に伝えたい」という先生の想いに共感してきました。

 

なぜ骨粗鬆症は放置されやすいのか。なぜ“骨活”が必要なのか。
そして、私たちは今日から何を始めればいいのか。

医療現場を見続けてきた先生だからこそ語れる、“予防”の本質について伺いました。

 

監修者画像

西横浜国際総合病院 整形外科医 金井 研三

横浜市立大学医学部卒業後、整形外科医として急性期医療に従事し、在宅医療や慢性期医療にも関わる。脊髄外科を専門としながら、超高齢社会において深刻化する骨粗鬆症の問題に着目。
現在は医師の立場から骨粗鬆症の啓発活動にも力を注ぎ、「骨折を減らし、整形外科医を不要にする」ことを目標に活動している。

 

「整形外科医を不要にしたい」に込めた思い

 

──金井先生は「整形外科医を不要にしたい」と発信されています。この言葉にはどんな意味があるのでしょうか?

骨の栄養やカルシウムの大切さって、みなさん知識としては知っていると思うんです。でも実際には、そこから行動につながるまでに結構ギャップがあるなと感じています。

やっぱり骨って、悪くなってもすぐに実感しにくいんですよね。だから後回しになりやすいのかなと思っています。

本来、骨の健康についてしっかり伝えていく役割って、僕たち整形外科医が担ってきたんです。
でも実は、整形外科医ってあまりそこに積極的になりづらい面もあるんですよ。

 

整形外科医って、骨折した患者さんを手術して、元気に歩けるようになる姿を見ることにやりがいを感じる人が多いんです。だから、骨折そのものを減らしていくような予防の仕事って、どうしても優先順位が上がりにくい。

そういう意味では、骨粗鬆症の予防って構造的に置き去りになりやすかったんじゃないかなと思っています。

なので、「整形外科医を不要にしたい」という言葉も、別に整形外科医への挑戦ではないんです。

「それってどういう意味?」って、今まで骨の健康に関心がなかった人が少しでも興味を持ってくれたらいいなと思って、この言葉を使っています。

 

骨折予防はなぜ広がらない? 社会と行政の現状

 

──骨折予防や骨粗鬆症対策について、社会や行政の取り組みをどう見ていますか?

もちろん、少しずつ動きは出てきています。例えば、健康診断の項目に骨密度検査が追加されたりする流れもあります。

ただ、糖尿病や高血圧みたいな生活習慣病に比べると、まだ十分に広がっているとは言いづらいのかなと思っています。

骨粗鬆症って、患者さんの数で言えば、例えば糖尿病の1.5倍もいてとても多いんです。でも、「すぐ命に関わる病気」というイメージが持たれにくいので、どうしても優先順位が下がりやすいのかもしれません。

 

国も重要性を理解していないわけではないと思っています。診療報酬改定を見ていても、「骨粗鬆症にしっかり取り組む医療機関を評価していこう」という流れは感じます。

ただ、まだまだ十分とは言えないですし、行政ってどうしても大きな仕組みなので、変化にも時間がかかるんですよね。

だからこそ、国の動きを待つだけじゃなくて、その前の段階で、もっと多くの人に骨の健康について知ってもらうことが大事なんじゃないかなと思っています。

 

骨粗鬆症に向き合うようになった原体験

 

──先生が骨活や骨粗鬆症予防に力を入れるようになったきっかけは?

急性期病院で働いていた頃は、正直、骨粗鬆症を自分のライフワークにしようとは思っていませんでした。

でも慢性期医療に携わるようになってから、考え方が大きく変わったんです。

地域の高齢者の患者さん達と長い時間軸で接しているうちに、「骨粗鬆症って、こんなに大きな課題なのに、まだ十分に向き合われていないんだな」と感じるようになりました。

整形外科医って、みんな薄々は気づいているんですよ。「骨粗鬆症って放置されがちだよね」って。でも、どこかで“しょうがないもの”として受け止めてしまっている部分もある。

僕自身も、以前はそうでした。

 

でも、骨折をきっかけに生活が大きく変わってしまう患者さんをたくさん見てきたんです。

手術も上手くいって、リハビリを頑張っても元通り歩ける人は約半分です。施設に入ることになってしまう人もいるし、入院をきっかけに認知機能が落ちてしまう方もいる。
本人からすると「ちょっと転んだだけ」なんですけど、その日常生活には大きな影響が出る。そしてその背景には長年の骨粗鬆症があるんですよね。

そういう姿を見ているうちに、「本当にこれを仕方ないで終わらせていいんだろうか」と思うようになりました。

 

骨粗鬆症は高齢女性だけの問題ではない

 

──骨粗鬆症というと、高齢女性のイメージがあります。

もちろん女性に多い病気ではあるんですが、実際には骨の健康って、赤ちゃんから高齢者まで、みんなに関係があることなんです。

今はカルシウム不足やビタミンD不足の人も多いですし、痩せすぎの方も増えています。

だから骨活って、特別なことというより、歯磨きみたいな日常習慣に近いものだと思っています。

 

あと、人数ベースでは女性の方が多いんですが、治療を受けている割合は1.9%と女性の11%よりかなり低いんです。

男性って、「今まで問題なかったから大丈夫」と思いやすいんですよね。でも実際には、気づかないまま進行しているケースもあります。

なので、男性こそ「自分は関係ない」と思わずに、一度意識してみてほしいなと思います。

 

──具体的には、どんなことを意識すればいいのでしょうか?

骨って、20歳くらいまでに“貯金”がほぼ決まると言われています。その後は、基本的には少しずつ減っていく。

なので、40代・50代以降は、急激に骨密度が下がるのをできるだけゆるやかにしていくことが大事なんです。

運動もすごく重要です。骨は刺激を受けることで強くなる性質があります。

ジャンプのように骨にしっかり負荷がかかる動きもいいですし、高齢の方なら、転倒予防につながる運動も大切です。

例えば、お尻や太ももの筋肉を使う「椅子から立ち上がる動作」を数回やるだけでも十分意味があります。

 

──子どもの骨活についてはどうでしょう?

骨って、0歳の頃からどんどん作られているんです。

普通に栄養を摂って、普通に運動していれば問題ないんですが、現状カルシウムなど不足している栄養素も多い。
栄養不足が続くと、将来的な”骨の貯金”が十分に作れない可能性があります。

その影響って、すぐには出ないんですよね。30代、40代までは問題なくても、その先で差が出てくることがある。

だからこそ、親御さんにもぜひ知っておいてほしいなと思います。

 

情報社会で「正しい医療情報」を見極めるには

 

──健康情報があふれる時代、私たちは何を信じればいいのでしょうか?

やっぱり一般の方からすると、何が正しい情報なのか判断するのって難しいと思うんです。

だからこそ、専門医が発信する情報には意味があると思っています。

ただ、医師だからといって、発信を全部鵜呑みにしてしまうのは危険だと思います。目的が「消費者の健康に寄与するため」だけとは限らないからです。

目的が”商品の売上に貢献する”だと、どうしても極端な発言になっているようなケースも目にします。

 

なので、「その人が何を大事にして発信しているのか」を見極めることが大切なんじゃないかなと思います。

予防医療って、現行の保険医療制度の中ではほとんど評価されていません。

だから僕自身、アプリを通じて、「まだ治療は必要ないけど、今のうちから栄養や運動を意識したほうがいいですよ」ということを届けていきたいと思っています。

 

「骨活は歯磨きと同じ社会にしたい」

 

──最後に、読者へメッセージをお願いします。

骨活って、「ちょっと気になるな」と思った瞬間が始め時なんですよ。

5歳でも15歳でも25歳でも55歳でも、「やってみようかな」と思った時がスタートだと思っています。

あと、骨活ってサプリを飲むことだけでは全然ないんです。

まずは正しい知識を知って、自分の体を理解することが大事。その上で、自分に必要かどうかを考えてもらえればいいと思っています。

できるだけ多くの人に、この知識が自然に届く社会になってほしいですね。

 

僕が理想としているのは、「骨活が歯磨きみたいに当たり前になる社会」です。

歯を磨かないと虫歯になる、放置すると大変になる――それってみんな自然に理解していますよね。

骨の健康も、同じくらい当たり前に意識されるようになったらいいなと思っています。

 

まとめ

「骨活は、歯磨きと同じ。」

金井先生の言葉には、骨粗鬆症を“特別な病気”ではなく、日常の中で予防していくべきものとして社会に根付かせたいという想いが込められていました。

骨粗鬆症は、自覚症状が少ないまま進行し、骨折をきっかけに生活そのものを大きく変えてしまうことがあります。
一方で、栄養・運動・正しい知識によって、未来のリスクを減らすこともできる疾患です。

「気づいた時が始め時」。

年齢や性別に関係なく、骨の健康を意識することは、これからの人生を守ることにつながります。

特別なことを始める必要はありません。
まずは、“骨の健康も日々の習慣で守るもの”という考え方を知ること。

その小さな意識の変化が、未来の自分や家族を支える第一歩になるのかもしれません。

 

※骨活や骨粗鬆症予防について、より詳しく知りたい方は、下記より金井先生監修の記事もぜひご覧ください。

食事・運動・栄養のポイントなど、日常生活で実践できる骨活についてわかりやすく解説しています。 

監修者紹介-金井研三 医師

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