健康への意識が高まる今、毎日の食事から身体を整える「食」の大切さが改めて注目されています。
私たちの暮らしに昔から寄り添ってきた発酵食品。その代表ともいえるお漬物は、単なるご飯のお供ではなく、野菜の恵みや乳酸菌の力を活かした、日本が誇る健康的な食文化の一つです。
皆さんも一度は耳にしたことがある、京都を代表する京漬物の老舗「西利」。創業以来、伝統の味を守りながら、時代の変化に合わせた商品開発や新しい発信にも積極的に取り組んでいます。
西利が大切にしている理念は、「旬 おいしく、やさしく。」。
旬の素材を活かしたおいしさを届けることはもちろん、自然環境への配慮や、食を通じて人々の健やかな暮らしを支えたいという想いが込められています。
今回は、京つけもの西利の広報・秘書 グループマネージャーである長谷川様に、発酵食品がもたらす健康への想いや、これからの時代にお漬物が果たす役割、そして毎日の食卓を豊かにするための取り組みについてお話を伺いました。

京つけもの西利 広報・秘書グループ マネージャー 長谷川 洋子
株式会社西利にて、広報・PRを担当。
「お漬物の良さをもっと知っていただきたい」という想いを軸に、
自身も「1日1発酵食品」を目標に、
「旬 おいしく、やさしく。」西利が守り続けるものづくりの精神

──西利が長い歴史の中で、最も大切にしてきた精神を教えてください。
西利が企業として最も大切にしている考え方が、「旬 おいしく、やさしく。」という理念です。
旬の商品を、最もおいしい状態でお客様へ届けること。それはもちろんですが、この言葉に込められている意味はそれだけではありません。
野菜を育てる大地や自然環境に対して優しくあること。そして、商品を届ける社員一人ひとりにとっても、働きやすく優しい会社であること。さまざまな「優しさ」が、この言葉には込められています。
また西利では、この理念を実現するために「3つの心」を育みながら、「塩かげん」の境地を目指しているといいます。
漬物づくりに欠かせない塩は、多すぎれば味が強くなり、少なすぎれば物足りなくなる。大切なのは、素材の良さを引き出すちょうど良いバランスです。
それは人の成長や仕事への向き合い方にも通じるものがあります。
「自分自身も振り返りながら、人として、仕事人として、ちょうど良い塩梅を目指していく。」
この考え方が、西利のものづくりや企業文化の根底にあります。
伝統を未来へつなぐための、変化への挑戦
──長い歴史の中で、大きな転換期となった出来事はありましたか。
大きな転機の一つとして挙げられるのが、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことでした。
日本の食文化が世界から評価された喜ばしい出来事である一方で、「和食は守っていかなければならない文化になった」という危機感も感じたといいます。
「伝統だから変えない」のではなく、未来へ残していくためには、新しい入口をつくることが必要なのではないか。
そんな想いから、西利では新しいブランドや商品の開発にも力を入れてきました。
「新しい商品をきっかけに、和食っていいな、お漬物に興味があるなと思っていただく入口になれば。」
若い世代や、これまでお漬物に馴染みがなかった方にも魅力を届けるため、さまざまな取り組みを進めています。
また、コロナ禍も大きな変化を迫られた時期でした。
店舗販売が大きな影響を受ける中で、ECサイトでは「ステイホームおたのしみセット」など、自宅で楽しめる商品展開を実施。想像以上の反響があり、お客様から「こんなにたくさん入っていて嬉しい」というお声もいただきました。
苦しい時期ではありましたが、その時間があったからこそ、現在につながるブランド展開や今後の方向性を考える大切な期間になりました。
発酵×発酵から生まれた「AMACO」

乳酸発酵甘麹「AMACO」を使用した甘麹熟成食パン2斤 1,404円(税込)
──さまざまな新しい取り組みをされていますが、その中でも「AMACO(アマコウ)」が誕生した背景や、商品に込められた想いを教えてください。
西利では以前から、お漬物づくりで使用している「麹」に着目し、この麹を活かした新しい商品開発の可能性を探っていました。
当時、世の中では甘酒が注目されていましたが、単に甘酒市場へ参入するのではなく、「西利だからこそ生み出せるもの」を追求したといいます。
そこで着目したのが、京都の伝統漬物「すぐき」から発見された植物由来乳酸菌「ラブレ乳酸菌」でした。
麹が持つ発酵の力に、ラブレ乳酸菌による発酵を掛け合わせるという、まさに「発酵×発酵」の発想から誕生したのが、独自の「乳酸発酵甘麹 AMACO」です。
当初は調味料やドリンクとして展開していましたが、コロナ禍をきっかけに、新たな可能性が広がりました。
社内で生まれたアイデアからレアチーズケーキの商品化につながり、「この発酵の力をパンにも活かせるのではないか」という発想から、パンづくりへの挑戦が始まりました。
そして2020年には本社地下にパン工房を開設。試行錯誤を重ねて完成したのが、「甘麹熟成食パン」です。
──甘麹熟成食パンの特徴や、おすすめの食べ方を教えてください。
甘麹熟成食パンの大きな特徴は、生クリームを一切使用せず、乳酸発酵甘麹の力で、時間が経っても硬くなりにくいことです。
甘麹ならではの自然な甘みが生地全体に広がり、そのままでも豊かな味わいを楽しめます。
また、西利ならではの楽しみ方として、お漬物との組み合わせもおすすめです。
例えば、山ごぼうを細切りにした醤油漬「山里の香り」など、香りのあるお漬物をパンに乗せ、チーズをかけてトーストにすると、甘麹の優しい甘みとお漬物の旨味が合わさった、新しい発酵食品の楽しみ方を味わえます。
お漬物の枠にとらわれず、発酵の魅力を日常の食卓へ届けていく。それがAMACOに込められた、西利の新しい挑戦です。
お漬物の価値を、暮らしの中へ広げていく

──西利では、お漬物や発酵文化の魅力をどのように多くの方へ伝えていこうと考えていますか。
西利が新しい商品や取り組みに挑戦する根底には、常に変わらない一つの想いがあります。
それは、「お漬物の良さをもっと多くの方に知っていただきたい」ということです。
現代では食生活が多様化し、昔のように毎日の食卓に必ずお漬物が並ぶ時代ではなくなりました。
だからこそ西利では、従来のお漬物という形だけにこだわらず、発酵文化そのものをより身近に感じてもらえる商品づくりを進めています。
先述した発麹甘麹を使ったパン(甘麹熟成食パン)や、ラブレ乳酸菌で発酵させた野菜を使って作ったスープなど、日常のさまざまな場面で発酵食品を楽しめる商品を展開しています。
一見すると新しいジャンルの商品に見えますが、その根底にあるのはあくまで「お漬物の魅力を伝えたい」という想いです。
また、若い世代への認知拡大に向けて、SNSでの情報発信にも力を入れています。
新しい層へ魅力を届けることは簡単ではなく、発信を始めてから成果が見えるまでには2〜3年という時間がかかりました。
それでも挑戦を続けられたのは、「まずはやってみよう」という自由な社風があるからです。そうした積み重ねが、新たな層へお漬物や発酵文化の魅力を届けることにつながっています。
発酵食品で、健やかな毎日と笑顔あふれる食卓を
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「発酵食品を毎日の生活に少しずつでも取り入れていただき、それが皆さまの健康や笑顔、そして楽しい食卓につながれば何より嬉しく思います。」
私たちがお届けしたいのは、単なるお漬物だけではありません。野菜や乳酸菌といった「発酵の力」を日々の食事においしく取り入れていただくことで、身体の健康はもちろん、食卓を囲む時間そのものをより豊かなものにしていただきたいという想いがあります。
そんな願いを込めて、西利はこれからも皆さまの暮らしに寄り添う商品づくりを続けていきます。
「野菜と乳酸菌で、健やかな毎日を。」
この言葉を大切にしながら、発酵食品の魅力をより多くの方へ届けていきたいと考えています。
日々の習慣が、未来の健康をつくる

今回のインタビューを通じて、健康な毎日を支えるものは特別なことではなく、日々の食事や小さな習慣の積み重ねであることを改めて感じました。
また、その考え方は、骨も毎日の習慣の積み重ねによって強くしていくという点にも通じていると感じています。何事においても、日々の小さな取り組みを継続することが、未来の健康につながるのではないでしょうか。
西利が大切にしている「旬 おいしく、やさしく。」という考え方には、食材のおいしさを届けるだけでなく、身体を思いやり、自然と共に歩み、豊かな食卓を未来へつないでいくという想いが込められています。
時代とともに食生活が変化する中でも、発酵食品が持つ価値を伝え続け、新しい形で届けようと挑戦される姿勢は、私たちにとっても大きな学びとなりました。
健康づくりは、毎日の選択から始まります。
私たちも、日々の習慣づくりの大切さを伝えながら、皆さまの健やかな暮らしを支える情報や価値をこれからも届けてまいります。
店舗紹介
京つけもの 西利本店・AMACO CAFE & Gallery
京都・西本願寺前にある西利本店は、京漬物はもちろん、発酵の技術を生かした食品やスイーツまで幅広く楽しめる、西利の魅力が詰まった旗艦店です。
店内では「京つけもの西利」をはじめ、「酵房西利」「発酵生活」「AMACO」など、西利が展開するブランドの商品を取り揃えています。
2階にはAMACO CAFE & Galleryを併設。
乳酸発酵甘麹「AMACO」を使ったソフトクリームやパフェ、ドリンクなど、発酵のやさしい味わいを気軽に楽しめます。
また、「食とアートが出会う文化発信拠点」をコンセプトに、ギャラリーとしても活用されており、発酵文化とアートが融合する空間となっています。
京漬物の伝統と、新しい発酵文化の魅力を一度に体感できる西利本店。京都観光の際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
店舗情報
店舗名:京つけもの 西利 本店(2F AMACO CAFE & Gallery)
住所:〒600-8227 京都府京都市下京区西中筋通七条上る菱屋町150-1
営業時間:9:00~18:00(AMACO CAFE & Gallery 9:30~17:00)
定休日:無休
電話番号:075-361-8181 0120-281ー812
アクセス:JR京都駅中央口から徒歩約10分

